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第148話 終戦 
皆の戦いが全て、終わりました。

衣絽羽の戦いも、紫栞の心との戦いも、シェスリナ達の戦いも、街の人たち全員の戦いも。



後日談風な展開も用意してあります。
まだ調整が必要なのですぐには更新できませんが、もうしばらくお待ちください。

ひとまず、本編の戦いはこれで本当に終わりです。
ここまでお付き合いいただきまして、誠にありがとうございます!
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世界に光が戻っていく。
雲っていた空も、次第に晴れ光のカーテンを創りだす。


倒れていたシェスリナは目を覚ます。
何が起こったのかと、上を見上げると衣絽羽と綺麗な女性が抱きしめ合っているのが見えた。

(…姫?いや、でも…なんだか雰囲気が)

そして次第に2人は下へと降りて行く。
それを見たシェスリナは「こうしちゃいられない」と、燐姫が空けた穴から下へ飛び降りた。


下へ降りたシェスリナは、衣絽羽がいる場所へ駆けて行く。
そのとき、真正面から黒いドレス風の服を着た女性がこちらへ歩いてくる。

紫栞、衣絽羽、シェスリナの3人の姿を見て笑顔を浮かべる。

その女性を見た衣絽羽は、少し驚いたような顔をした

「お主は…」
「お久しぶりです、オキツネサマ。紫栞様を助け出せると信じていましたよ」
「―――そうか…。全て、筒抜けじゃったか…」

黒いドレス姿の女性を見て、今までの出来事全てを悟った衣絽羽。
そして、その女性は笑顔のまま紫栞へ身体を向ける

「紫栞様。分かっていますよね?あなたがしなければならないこと」

その女性の言葉に、紫栞は目を閉じる。
そして自分の胸に両手を当て、光の玉を己の身体から優しく掬う。

「この子達には、とても悪いことをしてしまったわ…」

紫栞は優しく、地上へその魂2つを卸した。
光の玉はやがて、少女の形をとっていく。

それは、ずっと行方不明になっていたリリボンとプラシナだった。

その姿を見て、シェスリナは駆けて行った

「りりぽん!しーちゃん!!しっかりして!」

その呼びかけで目を覚ましたのは、プラシナだった。

「……リナ、さん…?」
「しーちゃん!!!よかった、無事で…、よかった…っ!」

シェスリナは、思いっきりプラシナを抱きしめた。
涙を目に浮かべながら、これでもかと抱きしめたのだった。

「う、うぅ…リナ、さ、ん…くるし…ぃ…」

そう言われ、すぐに抱きしめるのやめ「ごめんごめん」と謝る。
プラシナは横で眠っているリリボンを見つけると、ずっと呼びかけた

「リリ…、リリ……!!」

だが、リリボンは目を覚まさない。

「…この子の魂は、私の闇に蝕まれた。躯にも、心にも大きな傷を負った。しばらくは、目を覚まさないでしょう…」

その言葉に、プラシナは泣きながらリリボンの胸に顔をうずめた。
紫栞には、この光景が自分への戒めのように見えていた。

「こんな事態になってしまったことは私に責任があります。だから、せめて…」

紫栞は、リリボンとプラシナ2人に治癒魔法をかけた。
少しでも、負った傷を癒してあげようとして。

「…分かってます。あなたが望んでやったことではないことは。だから、そんなに自分を責めないでください」

他でもないプラシナが、そんな言葉を紫栞に伝えた。
その言葉を聞いて、紫栞はなんども「ごめんなさい…。ごめんなさい」と謝りつづけた。



そんな、静寂を破るように。
黒いドレス風の女性の後ろから、アビスが突撃してきた。
女性は、アビスが襲いかかってくることが分かっていたかのようにゆっくりと振り返り、アビスの手を片手で握り制止した。

「…てめぇ…、さっきはよくも…っ!」

怒りで我を忘れているアビスは、もう片方の手の爪を伸ばし女性を攻撃しようとするが

「やめなさい、アビス」

その言葉で、攻撃するのを止めた。
そして、その命令をした女性を見つめている

「…ちよ…?いや、りんか…?」
「―――もう、戦いは終わりました。手を引きなさい」

口調や、雰囲気の違いでアビスは「自分の知っている姫」ではないことを確信した

「…そう、か…。もう、いないのか…」

事実を確認し、もう自分が忠誠を誓ってきた『姫』はいないことが分かって全身から力が抜け落ちて行った。








しばらく時が経ち。
怪我をしていたテレリ、ルインティア、クルセィ、バラージュ。
ロア、エコー、セト、アビス、そして倒れていたサクヤ、黎音とサフィラ。

全員、本部のもとで治療を受けることとなった。
闇霧山にあった施設の中にいた少女たちの洗脳も解け、皆元の場所へと戻って行った。

陽刻楼、体育館などに避難していた人たちも、自分たちの家へ帰って行った。

魔獣の姿も、ルーミアや他のアパルリッター達の尽力のおかげで姿を見せることもなくなった。


長い長い戦いは終止符を打った。


つづく......

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第147話 たった一人の存在(とも) 
全ては1人の少女から始まった。

妖怪へ生まれ変わった少女から始まった。

その存在を憶えているのは、―――九尾の妖狐ただ一人。



長い長い時を経て、たどり着いた結末。






黒い炎は止まらない。

目の前で起こっていることを止めようと近づこうとするが、邪悪な炎が邪魔してゆく手を阻む。

「紫栞っ!!!」

衣絽羽は名前を叫び続ける。
だが、炎は勢いを増すばかりで収まる気配がない。
まるで衣絽羽を嫌うように、炎は辺りに激しく飛び散っていく。

やがてそれは爆発したように霧散し、人影がはっきりと目に捉えられていく。
姿をみた衣絽羽は、目を見開き目の前にいる人物を見たくなかった。

「―――し、おり…?」

蝶姫と燐姫、2人の姿はなかった。そこにいたのは、一人の美しい女性。
手も足も翅も。全てが真っ黒に染まった、禍々しいオーラを放つ女性。手足の先は黒すぎてそれ自体が影のような感覚。
それは、衣絽羽が知る紫栞そのものの姿をしていたのだ。

目からは黒い涙を流し、綺麗だった瞳は青でも赤でも紫でもない。
ただただ、黒く淀んでいた。

なにも言わず、前を見据える『姫達』だったモノ。
両手を大きく広げると、『姫』の中心から黒い幕が拡がっていく。
それはすべてを飲み込む闇の塊。

地上にいた者たち、静かに見守っていた人、気絶しているシェスリナやサフィラ共々。
全てを飲み込んでいく。

それは衣絽羽も同様だった。
真っ暗な闇に飲み込まれた瞬間、身体の中に深い闇が侵入してきたように凄まじい苦しさが込みあがってくる。

付喪神の鏡汐が慌てて、鏡を衣絽羽の周囲に展開させ防御陣を張る。
それのおかげで、少しは息ができるようにはなったが身体の痛みは消えていなかった

『衣絽羽!』
「…案ずるな…。これしき、どうということはない…」

改めて周りを見渡すが、すべてが真っ暗で景色も人も何も見えない。

「まさかこれが…樹里が視た、『終焉』…?」


『―――2匹の蝶はこの世に再び舞い降り、世界は混沌に包まれる。光は闇に飲まれ、世界は終わる』

樹里が過去に予言して見せた言葉を思い起こしていた。
この状況は、まさに樹里の予言通りだった。

「ほざけ…!こんな、終わり方…あってなるものか…!!」

衣絽羽は歯を食いしばり、拳を強く握りしめていた。
持っている扇子が折れてしまうくらいに。

「鏡汐、陣を解け。妾は紫栞を救う」

その言葉に付喪神は驚く。

『そんなことしたら、ほんとに闇に呑まれてしまう…!』
「分かっておる!……死と隣り合わせなのは、とうの昔に覚悟しておる…!」

衣絽羽の決意、願いを知りここまで一緒にきた鏡汐はその覚悟が本物だと悟った。
そして、何も言わず鏡汐は防御陣を解いた。

解いた瞬間、衣絽羽の身体を闇が蝕む。
それは今まで耐えてきたどんな苦痛よりも、痛々しいほど。
普通の人間なら、少し蝕まれただけでも息絶えてしまうほどの強烈な闇。

身体は全身におもりがついているように重い。
それでも衣絽羽は、ゆっくり近づいていく。
闇が拡がる中心には、この闇の持ち主が佇んでいた。
黒い涙を流し、仰いでいる。

近づいていくと、次第に声が聞こえてくるのがわかった。
それはどんどんはっきり聞こえてくる

【……ダレモ、ワタシヲ愛シテクレナイ…。独リボッチハ、イヤダ…。ワタシガ、悪イノ…。ワタシガ、出来モシナイ事ヲ願ッタリシナケレバ。コンナコトニハ、ナラナカッタノニ。生マレテコナケレバ…、アノトキシンデオケバヨカッタ―――】

それは、心の声。ずっと奥に秘めていた本音。
ずっとずっと、後悔と憎しみの声が聞こえてくる。

【ユルサナイ。ユルサナイ。ニンゲンナンテ…、ワタシガゼンブ…ゼンブ…!!!】

【ゴメンナサイ、ゴメン、ナ…サイ】

衣絽羽は分かっていた。街を呑みこんだこの闇の正体は、他でもない『姫』達の中にあったもの。
紫栞の中にあったもの。
裏切られたことに対する人間への憎しみと、大好きな人間を傷つけてしまったことへの後悔。
ずっとずっと自分の存在を否定し続けていた紫栞の心の奥底。
様々な思いが、今までの全てが混じり合った心の吐露。

【コノママ、ワタシトイッショニ――】

衣絽羽は強く、紫栞を抱きしめる。
触れた途端、多くの闇が衣絽羽を蝕もうとしてくる。ますます痛みが増していく。
もう、意識を保っているのもやっとだった。
それでも、離さまいと強く強く抱きしめた。

「……もう良い。もう、良いんじゃ。紫栞」

【―――イ、ろハ】

「あの時、お主と共に一緒に過ごしていれば…。妾に少しでも勇気があれば…。そなたがこんな姿になることなど、なかったかもしれぬ……」

衣絽羽が紡ぎだす一言一言を静かに聞いている。

「そなたは、妾が知らない処でこんなにも巨大な闇を抱えておったんじゃな…。そなたの気持ちを悟れなかった妾を許してほしい…っ」
【………イ、ろ……は…】

「妾は、ずっと…ずっと…。お主を捜し求めてここまで来た…。やっとお主の許へ辿り着けたというのに…。こんなところで死ぬのは妾が許さぬ…っ!」

もう身体が限界だった。
それでも、今までずっと伝えたかったことをここで言えなくなるまで言い続ける。
そして、再会できたら最も伝えたかったことを、今――。

「ずっと……出会った時から。紫栞のことが、好きじゃった――」

涙を流しながら、紫栞の唇に口づけをする。
口づけを交わした時、紫栞の目に流れていた涙が透明に変わっていく。
そして、静かに目を閉じる
紫栞から、禍々しいオーラが抜けていく。蝶の翅は真っ黒から綺麗な透き通った紫の翅へと変わっていく。


辺りに拡がっていた闇が消えていく。
全てを呑みこんだ闇は、霧となって散って行く。
呑みこまれた人たちは、せき込んだり倒れたりしていたが皆無事だった。


まだ、衣絽羽と紫栞は口づけを交わしていた。
今は誰も自分たちを見ていない。気が済むまで、彼女たちは口づけを交わし続けた。

しばらく交わした後、お互い顔を見つめ合う。
もう、衣絽羽はボロボロだった。
今にも倒れてしまいそうな目をしていた。それでも

「……おかえり、紫栞…」

その一言で、紫栞は救われた気がした。涙が溢れる。

「――…ただいま…。衣絽羽」

挨拶をかわしてすぐ、衣絽羽は安心したのかその場に崩れ落ちる。
それを紫栞が抱き留めた。

「衣絽羽のバカ…っ。無茶しすぎなのよ、私のためにこんな…」
「…紫栞じゃからじゃよ…。大切な存在(とも)を、見捨てる馬鹿はおらんよ…。妾にとって、たった一人の…存在(とも)なんじゃから―――」

その言葉で、また紫栞は涙を流す。さっきのお返しだと言わんばかりに、ぎゅっと抱きしめた…。


雲っていた空には、光が差しこんできていた―――


つづく.......

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第146話 『紫栞』 

もうここまできたらほんとうに終盤の終盤

長かった衣絽羽の戦いも終わりを告げそうです。

だが、まだ終わってない。
最後まで、抗え――






「ちがウ。ワタシハ…!」





『妾はそろそろ戻る。世話になった』
『うん。気を付けてね、衣絽羽』
『無茶はせんようにな。すぐに一人で悩むから…』
『分かってます。心配してくれてありがとう、お狐様』







「…知らない。知ラナイ知ラナイ知ラナイッ!違ウ。こんな記憶、私にはなイ゛ッ!!」

頭を抱えながら、暴れる蝶姫。
剣や炎、氷、植物と、使えるもの全てを召喚するかのように、それを衣絽羽へ向ける。
今まで見てきた技、術、能力すべてを根こそぎ吐き出すかのよう。

まるで、すべてを拒絶しようとしているかのように妖狐を自分の側へ近づけさせんとしている。

「   !!!」

衣絽羽は名前を呼ぶ。何度も、何度も。
――それは、『姫』の本当の名前。大切な人の名前。

聞こえるまで、何度も何度も叫ぶ





『……   り』
『うん?何?』
『……なんでもない』





姫の耳にはノイズになって聞こえない。だが、次第に言葉が分かり始めていた。
それが誰かの『名前』だということも分かりつつあった

ヤメロヤメロヤメロ!!呼ぶな、私を呼ぶなアあ゛アあ゛ァあ゛!!!

姫の髪が次第に動き出し、衣絽羽へ向けて高速で飛んでくる。
それに反応するのが遅れ、衣絽羽は攻撃を微かに受けてしまった。

頭に当たった衝撃で、蝶の簪が宙に浮いた。
それは下には落ちず、そこに滞空していた。そしてそれは、衣絽羽を守るように結界を作っていた

姫はその簪が視界に入った瞬間、また記憶が蘇ってきたのだ。

*
*
*

『これ、名前を付けてくれたお礼』
『かんざし?』
『私の妖力を込めてあるから。何かあった時、きっと衣絽羽を守ってくれるはず』


簪…。そうだ、あれは、私が創ったかんざし。大好きな人へあげた、かんざし…。





『お主の名は、『しおり』じゃ!』
『しおり?』
『紫に栞と書いて、『紫栞』じゃ。綺麗な紫の瞳が印象的だったことと何があっても忘れぬよう願いを込めて』


そうだ、私は…。
私の名は――




「紫栞」



姫の目には涙が溢れていた。
忘れていた名を、記憶を思い出し大好きな衣絽羽を傷つけてしまったことに泣いていた。
衣絽羽は、滞空していた蝶の飾りがついた簪をやさしく手のひらで受ける。

「ど、うして―――。私は、こんなことを…」
「紫栞…。やっと思い出してくれたんじゃな」

衣絽羽が、安堵の表情を浮かべ姫に近づこうとしたその時。
二人の間を割って、刀が飛んできた。

そして、次に影が鋭い針のように飛んできて衣絽羽の腕を掠っていった。

「衣絽羽!」

影が衣絽羽を捉えようと追いかけてくる。だが、黒い炎が下から飛んできて反応できなかった。
もろに直撃してしまった衣絽羽は、ボロボロだった。

下に目をやると、悶え苦しんでいるシェスリナの姿があった。
燐姫がここへ乱入してきたのだ。

「よくモお姉様を苦しめたな…。思い出シてホシくなかッタのニ……。オ前のせいデ全部台無しダ」

そういう燐の瞳にはもう、正気などなかった。真っ赤な瞳が黒いオーラを帯びているかのようだった

「やはり、自分の存在がどういうものか、分かっておったのか…。(くそ、しくじった…)」
「お前を殺して、お姉様を元に戻す。そして、この世界は私たちのモノになるの!!」

牙突の体制に入った。
あまりの速さに、衣絽羽は避けることができない。

終わったかと思ったその瞬間。

グサッ――


何かに刺さった音が響く。
目の前の光景に、衣絽羽も燐姫も驚いていた。

「…そなた、なにを」
「――お姉様…?なん、で…」


燐姫の攻撃を、身を挺して庇ったのは蝶姫だった。
自分で姉を刺してしまったことに、驚いていた。次第に震え始める

「おね、が…い…。い、ろはを…傷つけ…な、い…で…」

「嘘よ…。私が、お姉様を刺したなんて…。こんなの嘘、嘘ダ嘘ダウソダ!!!!」

次第に燐にもたれかかる蝶。

「燐…、ごめんなさい。私が、ぜんブ…わ、るい…ノ…。ごめ、ん…なさ…ぃ……」
「違う。これは夢…。そう、夢よ!ねえ、お姉様、しっかりしてよ…お姉様ぁ…」

蝶姫の瞼は静かに閉じていく。
そして、身体も冷たくなっていく。蝶姫は、このまま消えることを選んだのだった
そんな姉に必死に呼びかける声は、震えていた

「お姉様、ねぇ…また一緒に次の時代に行こうよ…ねえ!!」

現実を受け止めきれない燐姫は、どんどんおかしくなっていく。
その異変に気付くのはそう時間はかからなかった

「――また、独りぼっちナノ?そんなのもうイヤダ。ズット一緒ニいられないナラ…」


「燐、お主なにを!」


オ姉様ト一つにナル


燐が姉の首に牙を立てる。
その瞬間、衝撃波が辺りに飛び衣絽羽は遠くまで吹っ飛ばされてしまう。
それは下にいたシェスリナにも及んだ。




突然上空で黒い炎が上がった。
それは、地上にいた者たちにも鮮明に映った。
地上で戦いつかれたshethメンバーの4人。シュヴァルツたちの目にもはっきりと見えていた。

何もしらない住民たちは、その光景をみて何事だと騒ぎだす。
学園長もその光が、とてもよくないことだとその場にいなくても分かっていた。



「…皮肉ですね。2つの存在のまま、共に過ごしたかった夢を自ら壊してでも大好きな作り物の『姉』といたい。だなんて。」

一番高い木の上で、上空にある黒い炎を見つめている女性がいた。

「さあ、おキツネサマ。貴女様は紫栞様をどうお救いするのでしょうか。楽しみです」

常に笑顔を浮かべている。
それは、とても楽しんでいるようで。

「私は、救えると信じていますよ。オキツネサマ」

つづく......

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第145話 忘却ト追憶 
さあ、ここまでやってきました!

何度も何度もどうしようかなーと考えて。
考えては調整しの繰り返しで、ようやくまとまりました。


燐ちゃんがとんでもないことになってますが、ちゃんとお話し通りですのでご安心ください。
急に性格を変えたとか、そんなことは一切していません。

…まあ、設定やら描写やら。書こうと思ってたのに忘れてたり、没になったりはしてますがね(´・ω・`)






影が自分を包み込もうとしている直前に、猛スピードで後ろに抜け出し蝶姫を追う。

そして尻尾、狐火などを駆使し蝶姫の動きを止めていく。
衣絽羽の攻撃をすべて躱していく蝶姫。

上へ上へと昇っていくが、急に動きを止める。

「…本当に邪魔よ。九尾の妖狐」
「神の世界には干渉できぬ。いくらお主が神と同等の力を持っていたとしてものう。妾たちにとって、その領域は越えてはならぬ領域じゃ、蝶姫」

妖狐の言葉は事実だった。
だが、姫は改めて外を見渡す。そこは、人間達が住んでいる神都四町だった。
今、この世界は異界と現世。2つの世界が混じり合ってしまっている。

この現象を見て、姫は嗤った。

「……扉をこじ開けられない。なら、お前を倒してこの世界だけでも滅ぼしてやる」
「そんなに、人が憎いか…っ」
「憎いわ。誰も私を救ってくれない、認めてくれない。裏切られたこの気持ち、お前にはわかるはずもない!」

剣を無数に召喚し、それを衣絽羽へ向けて放つ。
それを避けながら、衣絽羽は少しでも蝶姫へ近づこうとしている。
それに気づいた蝶姫は、さらに数を増やす。

やがて、剣が命中し次々に体に剣が突き刺さる。

ニヤリと笑う蝶姫。…だが

「…!」

ボロボロの衣絽羽は鏡が割れたかのように砕け散った。

「こっちじゃ」

後ろを振り返ったときにはもう遅い。
衣絽羽の9本の尻尾が姫を襲う。


***

城の中では、燐姫とシェスリナが戦っていた。

燐姫は黒い炎を操り、シェスリナを翻弄する。
だが、それを凌ぐ武器を次々と召喚し、姫と互角に戦っていた。

「しーちゃん、もうやめよう?こんなこと」
「私は燐姫だ!そんな名で私を呼ぶなッ!」

炎を繰り出す燐姫。それを受けてしまったシェスリナ

「ふふふ、黒い水の力は本当ね。素晴らしい力だわぁ♪」
「しーちゃん…」

また炎が飛んでくるが、すぐに盾を召喚し攻撃を防ぐ

「ほんと、あなた達ってしつこいわね。どうして邪魔するの?これから素晴らしい世界が待ってるっていうのに」
「この世界は、あんた達の物じゃない。皆が暮らしてる街よ、世界よ!それをあんたらの勝手な理想で「はい、そうですか」なんて言えるわけないでしょ!?」
「……勝手なこと言わないで。私たちは最初こそ人間と共存しようと頑張ってた。もう少しで、それが実現しそうだったのに…」

影がシェスリナを縛り付ける。
咄嗟のことで判断できず、抜け出すことができない

「なのに…。先に裏切ったのはお前たち人間だ…!絶対に許さない。化け物と侮辱し森を焼き払い、お前らの勝手で殺されたことを、私は永遠に許しはしない…!何よりも許せないのはお姉様の夢をぶち壊したことだッ!!!

燐は影で槍を作り出し、それをシェスリナへ貫こうと飛んでくる。
縛り付けられていて、防ぐ手段がないシェスリナは目を強く瞑った

その時、その槍はあらぬ方向へと飛んで行った。そして他に召喚された槍数本を鞭で叩き落とす音が聞こえる。

「……どういうつもり?サフィラ」

その名前に、シェスリナは驚き後ろを振り向く。
サフィラが血の鞭を操り、槍の軌道を逸らしてくれたのだった。

サフィラは、すぐ自分の側で血塗れになって倒れている黎音を見た。

「妹様、お話が違います。私たちには一切手は出さないと以前申しておりましたのに」
「…………」
「…なぜ、黎音に手をかけたのです」

サフィラの目は、いつもとは違う。黎音を見て、もう助からないであろうこと。状況から見るに燐姫がやったことだというのは容易に想像ができたからだ。
サフィラは、初めて姫に対し怒りを露わにしている

「血が欲しかったの。普通の人間じゃない、力を持った女の子の血がね」
「……そうですか。残念です」

「…………お前も私を裏切るの?サフィラ…」

その質問には答えなかった

「…信じテタのニ。サフィラ…、ほんとに残念だよッ!!」

燐姫から黒い炎が怒りのように沸きあがる。それは城の天井に穴を空けるほどに。
部屋全体が黒い炎に包まれようとしている。
あたふたしているシェスリナを結界が包み込む。

「…サフィラさん!?」
「お願いします。どうか、姫を…助けてください…」

サフィラはそれ以上、何も言わなかった。何もしなかった。
次第に黒い炎がサフィラの身を焼く。

燐姫を中心に爆発したように黒い炎は、どんどん広がっていく。
この場にいた全員を焼き尽くす炎は、燐姫の気が収まるとどんどん静まっていく。

サフィラは倒れていた。黎音を守るかのように。

シェスリナの姿が見えないことに気づき、周りを見渡す燐姫。
後ろから、シェスリナが奇襲をかける!

電撃を浴びせ、鎖を召喚し燐の身体を縛り付ける。
そして、シェスリナは自らの能力で燐を浄化しようと試みる

痛々しい悲鳴が上がる。

「おのれ!おのれおのれおのれ!!調子に乗るなっ!!!」

黒いオーラがにじみ出てくる。それは鎖を伝って、シェスリナにも影響を及ぼす。
シェスリナは苦しいのに耐えられず、拘束を解いてしまう

「フフフ、無駄ヨ。私には効かないわ、あはははは!」
「うぅ…な、んで…」
「お前たちは“私”を止めることはできない」

真っ赤な瞳が、シェスリナを見下ろす―――。




尻尾に襲われたかと思いきや、姫は黒い結界を貼ってその場で衣絽羽の猛攻を凌いでみせた。

「……やはり、侮れんな。蝶姫」
「おのれッ…!」

衣絽羽は悲しんでいた。とても。

「……もう、妾の名を呼んではくれぬのだな…。妾のことも己の夢も全て忘れてしまったのか…?」
「私の…夢、だと?」
「お主が夢見ていたのは、人と妖が共存する世界を創ることではなかったのか。必ず実現させると…、もし叶ったら一番最初に知らせると。いつも妾に話していたのに…。それも、もう忘れてしまったのか…」

「…なにを言っている。私はそんなこと知らない…」

「妾はもう、そんな…。黒く染まった翅のお主など見とうない…」

「ちがウ。わた、シは…」

衣絽羽の言葉に、表情に戸惑う蝶姫。
彼女の脳裏には、ある記憶が蘇ってきていた。


つづく.......

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第144話 神ヘノ頂 
ずっと書きたかった場面までたどりつけました。
ずっとずっと、練りに練って考えてきた終盤。

もうほんとうに終わろうとしています。

と、思わせておいてもう少しだけ続きそうですがね






黎音は、サフィラに頼まれるがままずっと姫達が目覚めるのを待ち続けている。
白い繭を見つめながらずっと黄昏ている。

もう少し、眠ってしまおうかと目を閉じた瞬間。繭からドクンッと鼓動が聞こえてきた。
その音で黎音は目を開け、繭を見続けた

鼓動は激しくなり、この場にあった全ての黒い水が繭に吸い込まれていく。

やがて繭を破り一人這い出してくる。
白い腕が見え、その次は頭。その次は足。
次第に人の形が見えてくる。

繭を破り、完全に姿を現したのは赤い瞳の燐だった。肌は繭の中にいたためか、濡れている
姫の姿を見て、黎音は見惚れていたがゆっくりと立ち上がる。

「燐様」
「…ああ、黎音。おはよう。ずっとここで待っててくれたの?」
「え、…あ、はい…」

黎音は燐の白い透き通った肌やそれを一層際立たせる黒髪。真っ赤な瞳を見て顔を赤らめていた。
いつもはこんなに照れくさくないのに、なぜ顔が熱いのだろうと不思議に思っていた。

「うふふ、嬉しい♪そんな黎音にはご褒美あげちゃう」

そう言うと、ゆっくりと黎音に近づく。だが、黎音はなんだか胸騒ぎがし今にでも逃げ出さないといけないような気がした。
しかし、動けない。命令されていないから、とか。そんなことではなく。
縛り付けられたように体が全く動かなかったのだ。

「あ、…あの…燐、さま…何を…」
「お姉様まだ目を覚まさないの。だからね」




「あなたの血を頂戴♪」




次第に危機感を感じていった。
始めて姫に出会った時から、ここまで来た道のりを思い出していた。

可愛そうな姫のために、ここまで来た。後悔などないと何度も自分に問うた。
だが、はじめて。ここまでついてきてしまったことに。

―――後悔した。



*
*
*

ロアの治療をし、テレリのことも落ち着かせて黄昏ていたサフィラ。
このままで本当にいいのか、考えていた。
姫の思う通りの未来が出来たら、この世界がどうなるかなんてわかっていたから。

「…!?」

葛藤している中、サフィラは嫌な予感を感じた。
テレリは顔色が変わり、小刻みに震えているサフィラを静かに見つめていた

「まさか…!黎音!!!」




***

奥へ奥へと進む衣絽羽とシェスリナ。
だが、衣絽羽は何かを感じ取り次第に急ぎ足になる

通路が広くなっていき、やがてひらけた場所に出る。そして姫の気配がする方へと進んでいく。
そして、一つの鉄製の扉の前まで来た。
躊躇うことなく、開ける

目に飛び込んできたのは、信じがたい光景だった
一番驚いていたのは衣絽羽だった

「…なに…これ…」

仲間であろう魔女の姿をした子供の胸に白い腕が突き刺さっていた。
それは貫通しており、誰がどう見ても助からない状況だった

「…裏切った子猫ちゃんと、女狐か。よくここまで来たわね、褒めてあげるわ」

2人を見た燐は、嗤っていた。顔や体には大量の返り血がついている。

「燐よ。お主、何をしておる…」
「あらぁ?見て分からない?血を頂いてるのよ」

そう言うと、腕を乱暴に引き抜き血をペロっと舐めた

「おいしぃ♪これならお姉様も目を覚ましてくれるわぁ♪」

黎音の血が燐姫の手に吸い付いていく。
そしてそれを、繭の中へ手を入れた

「…り…ン…さ、マ…どウし、テ…」

血まみれになった黎音はもう意識がほとんどなかった。彼女の目には、涙が溢れていた。

「黎音、喜びなさい。貴女の血は他でもないお姉様の糧になれるのよ♪貴女の血がお姉様を神へと昇華させるの。これほど嬉しいことはないでしょう?あははははははは!

部屋に、燐姫の狂気の笑い声が木霊する。
黎音の血を吸って、繭から鼓動が響き始める。

シェスリナは腹が立っていた。
仲間を躊躇なく、殺したことに対して。

はやくぶん殴りたいと思っていると、衣絽羽が口を開けた

「…気でも狂ったか、燐」

その問いかけを聞いても、しばらく狂気を含んだ笑い声をあげていた。
思う存分笑い済んだのか、姉が眠っている繭に寄り添い優しく撫でる

「私にはお姉様さえいればそれでいいの。他のやつらなんて、どうでもいい!」

振り返ると同時に、彼女の身体に黒い影が覆う。それは次第にドレスへと姿を変えた
それとほぼ同時に、繭が花が咲いたかのように開いていく。
その中からもう一人、青い瞳を持った女性が姿を現した。
黒い影が服へと変わると、その女性は黒い蝶の翅を広げ上へと飛んで行った。

繭があった真上に、外の上空へ続く扉が出来ていた。
姫が飛んで行ったのを確認すると、衣絽羽もそのあとを追う。

「あ、衣絽羽さん!?」
「燐を頼む!妾は蝶を止める!」

そう言い残して、衣絽羽は扉の中へ入っていった。
それを見た燐は、衣絽羽を追おうとするがシリンダーで光の玉をぶつけ注意を自分へと逸らさせる。

「しーちゃん!あなたの相手は私よ!!」
「邪魔だ!!」





上空へ上空へ手を伸ばし、飛び続ける蝶姫を衣絽羽が狐火で動きを止める。

「蝶姫!お主、正気か!?本当に神になろうと申すのか!!」
「…邪魔しないで」

蝶姫は、黒い影を操り衣絽羽を包み込もうとする

「蝶姫!!」















……少しずつ、少しずつ。
変わろうとしていく世界。それは、とても傲慢な願い。
かつて、神の使いと呼ばれた妖が。人々の願いを叶えてきた妖が。

全てを壊そうとしている。神になろうとしている。

それに、皆必死に抗っていく。
大切な人を取り戻すために、戦っている。

うふふ。私は、信じていますよ。

きっと、哀れな罪に溺れてしまった一人の妖を救いだせることを。
世界を救えることを。

だって、“人”は未知なる可能性を秘めているのですから。

つづく.....

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第143話 不老不死 
本当は、何話かついでに更新しようか決めようと思ったんだけど。
あまりに疲れ果ててしまい、それどころじゃないんでとりあえず1話だけ更新します(´・ω・`)

衣絽羽VSサクヤ編です。






「あなたは人間なの?」
「……紛れもない、人間よ?」

その答えは、なにかが引っかかった。
嘘か真実(ほんとう)かわからない。見た目だけ見れば、少し若すぎる“琴神音家の専属メイド”だからである。

女性が「人間だ」と答えた瞬間。
衣絽羽が目に見えぬ速さで手に持っていた扇子を首目がけて突いたのである。
そのとき、女性の首から鳴ってはいけない音が聞こえた。

―――グギッ

シェスリナはあわてふためいた。

「ちょっ……!」

待って という前に、衣絽羽はそのまま扇子に力を加え女性を吹き飛ばした。

その力は、壁に穴を空けるほどに。


何事もないように、扇子を広げ口元を隠す。
シェスリナは物凄く青ざめていた。

「し、死んだらどうするのよ!?今あの人のく、首……お、おおお折った…」
「あやつが《人間》かどうか確かめただけじゃ」
「いやいや!普通あんなことになったらどうあっても死ぬでしょ!?」
「『普通』なら、の…」
「え?」

そんな会話をぶった切るように、瓦礫になった壁の欠片がドンッと音を立てて床に落ちた。

「――酷いわね。いきなり襲うなんて」

そう言いながら、立ち上がり前へ出た女性。
だが、その首はあらぬ方向に曲がっていた。

「ひっ……!?」

そんな驚くシェスリナをよそに、彼女は首に手をかけたかと思うと無理矢理正常な位置に骨を戻し、何事もないかのように元通りになった。
戻したあと、首を左右に動かす。ポキポキと音を鳴らしうなじを手でさすっていた。

「な、なんで……今ので生きてるわけ…」
「こやつは、人で在りながら人で在ることを辞めた――云わば、不老不死のようなものじゃな」

(不老……不死……!?)

「……そうね。訂正するわ、猫さん。私は“元”人間よ」

「…ヤヨイも、人を辞めたのう。今のお主のように」
「私の名前はサクヤよ。やよいじゃない」
「折角、人の子として生まれ変わったと言うのに……人で在ることを捨てるとは…。皮肉なものよの」

「不老不死なんて……そんなの…」
「『いるわけない』、とでも?」

「現に私は1500年間、ずっと姫様を御護りするために生きている。それに、あなたの隣にいる九尾の妖狐も不老不死みたいなものじゃない」

そう言われ、衣絽羽の顔を見上げる。
恐くなったのか、少しずつ遠ざかっていこうとしている。
そんなシェスリナを離さないように尻尾の1本を器用に動かし、シェスリナの身体を巻き付く。

「…今ごろ妾を畏れるのか。シェスリナ、気をしっかり持て」

そう言っても、少し身体は震えていた。

「わからない。なぜ、人間に味方するのか」
「……その質問をされるのもいい加減飽きてきたのう。皆同じことを口を揃えて言うもんじゃから」

「…そう。じゃあ、質問を変えましょう。――なぜ私たちの邪魔をする」

サクヤの目は、先ほどよりもギラギラと輝いていた。妖狐を睨みつけている

「邪魔?邪魔などしておらん。妾は只、遠くから見守っておっただけじゃ」
「何を言う。現に今、お前はこの空間にいる。姫様の計画を邪魔しようとしていることは事実だ」

「…そうじゃな。今までは見守っていた。ただそれだけじゃ。じゃが――」

しばらく目を閉じ、何かを思い出しているようだった。
だが、すぐに目を開け、サクヤを見つめる。

「もう十分長い時間(あいだ)見守ってきた。様子も見てきた。…そろそろ妾も動くときが来た」

妖狐から、気迫を感じたサクヤは身構えた。
目つきも、鋭くなっている。

「――反してもらうぞ。妾の大切な存在(とも)を」

最初に仕掛けたのは、妖狐だった。
サクヤの急所目がけて、数本の尻尾を針のように鋭く突き刺す。

だが、サクヤは目の前に亀裂を作り、同じ空間の別の場所と繋げ妖狐の攻撃を躱した。

「…そうじゃったな。お主は、時空の申し子じゃったの」
「だからどうした」
「いや、なに。昔を思い出しただけじゃ」

そう言うと、サクヤが空けた空間の中へ残りの尻尾もその中へわざと入れる。

「(何をしている?)」

8本の尻尾が亀裂の中へ入っていった。次の瞬間、空間が歪む。
サクヤは苦しそうに胸を押さえた。

「…なにを…した…!」

パンッと空間は弾けた。尻尾は衣絽羽の元へ戻っていく。

「お主の空間の中を荒らさせてもらった。どうじゃ?相当苦しいじゃろ?」
「お前…!!」
「空間はお主の心のようなもの。それを理解していなければ、時空は簡単には扱えん」

サクヤは舌打ちをすると、二丁拳銃を魔法陣から取り出し妖狐に向けて放った。

妖狐は銃弾が当たる直前に、尻尾で銃弾を握るようにして止めた。

「…!!」
「…この弾に当たると、毒に蝕まれることは知っておる。ただの弾ではないからのう」

もう1丁の銃弾は空間操作を利用し、妖狐の死角から放ったがそれも先ほど同様尻尾で止められていた

ここまで、妖狐はその場から一歩も動いていない。
サクヤはまだ、苦しいのか胸を押さえている。

見つめ合っている時間のほうが長く感じるほどに、何も進展がない。

「……おかしいのう?お主、時も操れたはずなんじゃがの。それはもう忘れてしまったのか」
「何…?」
「いつ使うのかと、様子を見ておったんじゃがな…。時間の無駄じゃったか」

そういうと、扇子を広げ薙ぎ払う動作をする。すると、そこから狐の形をした風がサクヤを襲った。
そこに追い打ちを掛けるように、特大の狐一匹を召喚し上から押し付ける。

妖狐は、サクヤの状態を確認せずにシェスリナを尻尾で依然巻き付けたまま奥へと移動していく。

そして奥へ続く通路につくと、シェスリナを尻尾から離した。
身体をぶるぶると震わせていたシェスリナは、尻尾が離れたことに気づき改めて衣絽羽を見つめる。

「まだ妾が恐いか?」

その問いに、シェスリナはしばらく言葉が浮かばなかった。だが、自分を守りながらここまで進み自分の母とも親しかった。
それを思うと、なぜ恐いと思ったのか分からなくなっていた。


その時、後ろからドンッと音がした。それに吃驚して、振り返るシェスリナ。
サクヤが、ぼろぼろになりながらも立っていた。

「…ほう?忘れているわけではないようじゃ」

妖狐はサクヤに向き直す。
だが、サクヤの目は先ほどよりも鋭くなっていた。妖狐を見つけるとすぐに攻撃を繰り出す。
先ほどまで拳銃を使っていたが、今使っているのはよく見ると短剣だった。

「今度こそ私がお護りする!あの時誓ったんだ私は゛っ!」

乱暴に短剣を振り回す。
先ほどのまでの冷静さが消え、非常に荒々しい。
まるで何かが吹っ切れてしまったように。

そんなサクヤを見て、衣絽羽は笑っていた。嬉しそうに。

「もうあんな目には合わせない!お前はここで私が殺してやる!!」

サクヤは一瞬で衣絽羽の懐に潜りこんだり、いつの間にか後ろに回り込んでいたりと。
先ほどとは動きが全然違っていた。
それどころか、亀裂を幾つも展開し隠し持っている武器をふんだんに使っていく。
衣絽羽を殺してしまう勢いで。

それでも衣絽羽は、すべて御見通しだと言わんばかりに軽々と躱していく。

「時間操作の感覚は、何度味わっても慣れぬが」

衣絽羽は狐火を繰り出し、9本の尻尾で追い打ちをかける

「怒りで我を見失い過ぎじゃぞ」

妖狐の攻撃はすべて命中した。
尻尾でサクヤの身体を叩きつける。

もう動かなくなった時点で攻撃を止める。

「……死んでないでしょうね…?」

シェスリナが恐る恐る尋ねる。

(自分が入る余地がなかったとはいえ、さすがにやりすぎじゃないかしら…)

「安心せい、殺してはおらん。気絶させただけじゃ」
「気絶どころじゃないと思うんだけど!?」
「こやつはそう簡単には死なん。時期に目を覚ます」

先に奥へ行こうとする衣絽羽に、慌ててついていくシェスリナ


「…姫様…」

目を閉じる寸前、彼女は今までで一番穏やかな声で愛しい物の名を呼んだ――

つづく.......

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