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第40話 蝶々 
さて、第2章が始まり早くも2話目に突入するが。
これから先、読む人によっては気分を害することがあるかもしれない。そういう方々は読むのを控えてほしい。

あなたはもし、不思議な光を見かけたらその光を追おうとするだろうか?
それとも見て見ぬふりをするのだろうか・・・?

未来が「こうなる」と分かっていたら、1人はそれを見て見ぬふりをするだろう。1人はそれを追おうとするだろう。
未来というものは決して分からない。分からないからこそ今現在の時間で人々は過ごしている。
全てが分かり切ってしまえば、それは何も意味を成さない。なぜなら、誰も行動を起こさなくなるからだ。何も考えられなくなる。だから、私たちはこの先の未来が分からない状況で何かを考え、何かを信じ、何かを頑張ろうとするのだ。それが現実であり、当たり前なことになっている。


しかし、この姉妹たちの場合はどうなる?
誰からも愛されず、自分たちだけで生きてゆかなければならない現状で彼女たちには何が「当たり前」で何が「普通」なのかが分からない。しかし、それは現代を生きている私たちでさえも分からないことだと私は思う。
一体、この世でいう「当たり前」や「普通」とは何なのだろうか?何をしたら「普通」になる?何を思えば「当たり前」だと思える?
それは、私でも分からない。いっそのこと誰かに教えてもらいたいくらいだ。


・・・話が逸れてしまった。
では、物語の中へ。





この夜、1人の少女は大切な人のために全てを犠牲にする。
どうしてこんなことになってしまったのか・・・・、それは本人も分からないままだ。



・・・星が綺麗に顔を出している。今日は新月の夜。そんな日に私は目を覚ましてしまった。
燐は気持ちよく眠っている。
外の空気が吸いたくなって、燐を起こさないように立ち上がり洞窟の外に出た。
上を見ると満点の星空が美しく輝いていた。

「きれい・・・」

思わず口にして静かな夜の一時を過ごした。夜風は冷たくひんやりしていたけれどそんなことも気にせず、ただただ星空を見続けていた。

そんな時、どこからかポーン・・・という神秘的な音が私の頭の中に響いてきた。音が聞こえてくる方向には木々が生い茂っている森が見える。森の奥は暗くてよく見えない。でも、私には見えた。紫色に光る何かが・・・
それが気になって、気づけば体は森に向かって一歩ずつ足を進めている。

ゆっくり、ゆっくり・・・前へ前へと進む。ある程度進んだとき、紫色に光っている場所からここへ何かが飛んできた。それは、紫色にほんわかと体を光らせている黒い蝶々だった。
その蝶々は私のことを認知すると、「おいで」と言っているように私を案内し始める。
案内されて辿り着いた場所はとても暗く、薄気味悪い感覚が私を襲った。
理由なんてわからない。どうしてこんなに気持ち悪いのか、私は何も分からない。
案内してくれた黒い蝶々は私の手の甲にピタッととまる。
紫に光るその蝶々は私の心を少しだけど落ち着かせてくれた。




でも、それは一瞬で掻き消される。蝶々が私にとまってから、頭の中でいろんなものが見えてくる。
喚く声、叫ぶ声、悲鳴や誰かが泣いている声が頭の中に響いてくる。それに加え、映像が次々と流れ込んでくる。
頭に激しい頭痛が走り、私は立っていられなくなって頭を抱え込むようにしてその場に佇んだ。








―――誰かが、化け物を見るような目で一人の女性を見ている。

『ばっ・・・、化け物め!皆、撃て!撃てー!』

女性に向かって、沢山の矢が飛び交う。銃声が響く。
女性は泣きながら、狂ったように人々を殺していく。
もがき苦しみながら女性は既に死んでいる男に対して何度も何度も剣を突き立てる。

『裏切った・・・!貴様らは、我々を裏切ったのだ!殺す殺す殺す殺す殺す・・・!』

女性は泣いていた。なのに、剣を握っている手は動きを止めようとはしない。
その時、銃声が響いた。銃弾は女性の心臓や頭を貫いた。その度に血が飛び散る―――。







「もうやめてっ!!!」

涙が込み上げてくる
もう嫌だ!見たくない!やめてよ!こんなもの私に見せないでよっ!!



―――『・・・君は見るべきなんだよ』

また声が響く。声の正体は私に止まっている黒い蝶々からだった。

―――『君は知らなければならない。君のことも、ここで何があったのかも、全て』

・・・私のことを・・・知る?

―――『そうだよ。僕は君を迎えに来たんだ。』

迎えに・・・?私を・・・?

―――『妹を守りたいんだろ?僕なら力になれるよ』

・・・燐を、守れるの?本当に、私が燐を救うことができるの・・・?

―――『力が欲しくはないか?蝶の刻印を刻む者よ』

欲しい・・・。あの子を守れる力が・・・欲しい!


蝶々が強く紫色に光り始めると、私の胸元にあった1つの刻印が光り出した。
刻印が輝き出すのと同時に、私の体を何かが蝕んでいく感覚に襲われる。苦しい・・・でも・・・、何だろう?この感覚・・・とっても、懐かしくて・・・気持ちいいだなんて思ってしまうのは・・・

――『それが本当の君だよ。僕のご主人様』

本当の私・・・。こんなにも闇が愛しいだなんて思ってしまう。
燐を守れるなら、私は人間を捨てたっていい・・・



**

そのまま目を閉じてしまったせいか、自分の身に何が起こったのかわからなかった。ただ、闇が私の中へ入っていく感じがしていた。
気づいた時には、私はこの場所で眠っていた。手の甲に蝶が止まった感触で私は目を覚ました。
自分の手や体を見て、驚いた。スラッとした細い指、お人形のように白い肌、そして体は子供から大人へ急激に成長したかのように1人の女性の姿になっていた。


その時、わかったんだ。もう人間じゃないということに。
辺りには絶望や悲しみが溢れているってことに、気づいたの。




――あの映像にあった女性は、他でもない私だってことに・・・

「ハハッ・・・」

笑った。ただ笑うしかなかった。涙を流しながら笑うしか。
そうでもしないと私、この絶望に押し潰されそうになってしまいそうだから。
私にはもう、人々の悲しみや憎しみしか見えないし聞こえない。

笑いが止まらない。涙が止まらない。闇だけが私を救ってくれる唯一の光――。



『今夜、あの小娘らを始末しよう』



突如、声が聞こえてきた。映像から察するに、忌々しいあの村の人間・・・








・・・・人間?始末・・・?
・・・フフ、分かってるわ・・・私たちのことでしょ?私たちを殺すのでしょ?
あの時みたいに私たちを化け物扱いするのでしょ?


人間ってなんて醜いのかしら・・・



『あいつらがいなくなれば物も盗られなくなるしな、賛成だ』



・・・自分達が幸せならそれでいいのよね?私たちのこと、何も知らないくせに・・・
憎い・・・私を裏切り、挙げ句の果てに燐を殺した人間達が。


見てなさい・・・今にきっと後悔させてやる。今度こそ、あの子を守ってみせる。


『あの湖の近くの洞窟が怪しいな』
『そうだな、そこに隠れてるかもしれない。見に行ってみようぜ』


・・・洞窟。燐が危ない。
助けにいかなきゃ・・・

ゆっくり立ち上がって私はもと来た道を戻りにフラフラする体を必死に支えながら前へ前へ足を動かす。闇が私にまとわりつき、やがて豪華な黒いドレスへと形を変える。
歩く度に、周りに無数の蝶々が私を心配するかのようについてくる。


この時、私は今までにないほどに不気味な笑みを浮かべていたであろう・・・
無数の蝶々はその笑みに反応するかのように深い深い森の中で弧を描きながら舞い上がっていた。



つづく.....
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THEME | GENRE 小説・文学 |
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