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第91話 気持チノ裏 
私は普通の暮らしをして、普通に学校に行って、普通に友達と遊んだりして。
そんな普通の生活。



でも、世界中にはそんな「普通の生活」ができない子がたくさんいる。
それは海外だけじゃなくて、日本のどこかにもいるかもしれない。


忘れないでほしい。
今もこうやって普通に生活している中で、ずっとずっと苦しんで生きている子たちがいることを―――。




桜が咲き乱れる。
季節は春。朱巫家では姉妹が手を繋いで母親の様子を見ている

「姉さん、母さん何やってるの?」
「・・・祈祷っていって神様に大切なものを守れるようにお祈りしてるんだよ」

優しくまだ幼い妹に教える。

「そういうの“巫女”っていうんでしょ?すごいなぁー」

目をキラキラさせ期待に満ちている。そんな様子を姉は悲しそうな顔をして俯く。

そうしていると、母親の祈祷が終わりこちらへ歩いてくる

「緋漓。そろそろあなたに巫女を継いでもらわないといけない。考えておいてね?」

「・・・はい」

姉の返事はとても元気がなかった。お辞儀を静かにし、妹を見つめていた

「・・・?姉さん、どうしたの?」

優しい笑顔を無理矢理作って

「・・・ううん。何でもない」





何で私は四大貴族の家系なんだろう?何で朱巫家に生まれてきたんだろう?

掟。昔から必ず掟を守り、巫女を代々つとめてきた四大貴族で唯一の巫女の家系。
私が10歳の頃に、巫女を継がなければならないということを言われた。
本当は13歳に継がなきゃいけないのに、私はまだ継ごうと思えない。

正直、嫌なんだ・・・。
家系の掟に縛られて自分が巫女にならなきゃいけないことが
私はもっと普通の生活がしたい。普通に学校に行って、普通に友達と遊んだり勉強したり。

今通ってる学校は、普通の学校とは違う。
悪い奴らからこの街を守る騎士、アパルリッターになるための学校。
授業の内容だってそれに従ったものが多い。戦闘実践なんてものもあるし・・・

でも楽しい。
友達だっているし、普通の学生がするような話だっていっぱいする。
それに一番心配な親友だっているし





「あの番組見た?めっちゃ爆笑しちゃったわ。思い出しただけで笑える・・・プププ」
「一人で盛り上がってもしょーがないでしょ。第いちテレビなんてあんまり見ないわ」

刹那ったらまたテレビ見てたのか・・・。飽きないのね、バラエティー番組。

「・・・私ん家は、何もさせてもらえないから・・・ごめんね・・・」
「わ、わたしも・・・あんまり見ないの・・・」

蜜柑の家はあんまり環境よくないらしいし、梔子のとこは・・・まあお嬢様だから当然っちゃ当然よね・・・

「もう、つまらないじゃない。皆テレビ見ないとか」
「刹那のところみたいに、自由に何でもできる家じゃないのよ私たちは」

自由になりたいわ。掟に縛られるのが嫌だ。
そういうと刹那が悲しい顔して

「・・・あたしだって・・・、そんな自由じゃないよ・・・」

刹那・・・?
どうしたんだろう、いつもなら笑うのに。

蜜柑も梔子も普段あんまり喋らないし。

「猫の写真でも見る?この前家の庭で歩いてたの」

話題を振ってみる
猫と聞いた瞬間、蜜柑が身を乗り出して見に来る。
表情はいつもより明るめだった
少しでも明るくなったのならよかった

「猫かー、耳ピクピク動いてるの可愛くて好きよ」
「・・・しっぽも、可愛いよ・・・?」

梔子も心なしか楽しんでくれてるようで安心した。
一番心配な親友っていうのは姫乃梔子っていう良家のお嬢様で・・・これがかなりの世間知らず。
最初に出会った頃なんてすごかった。
物の名前とか何言っても通じない。でも唯一「猫」の話はすぐに分かってくれた
だから時折、こうやって猫がいたらジェムの視界スクショで写真撮っておくの

それからは緊急警報も入らず、猫の話で持ちきってた
いつのまにか夕方になってて皆そろそろ帰らないといけない時刻になっちゃった

正直、帰りたくない。
家なんかより学校のほうが楽しいもの
帰ったらまた巫女の話が出てくる
でも帰らないわけにもいかない。仕方なく今日はお開き。

「じゃあまた明日」
「・・・うん」

蜜柑も暗い表情をしてる。いつも帰りたくないって言うから・・・
刹那が蜜柑の肩に手を置いて

「家の前まで送ってあげるから・・・ね?」

そう言うと蜜柑はコクッと首を縦に振った。
その後私は梔子と一緒に途中まで帰り道を歩いた

別れたあと私は一人で家まで帰る。家が見えてくる度に心は嫌がるばかりだった



*
*
*




刹那は蜜柑を送り届けて

「何かあったらすぐに私に言うのよ?ボイスチャットでもメールでもいいから。ね?」
「・・・うん。ありがと」

刹那は蜜柑が家の中に入るまでずっと見守っていた
しばらく経ったあと刹那も家へと帰っていった


蜜柑は「ただいま」と力なく言った。すると母親ではなく年配の女性がやってきて

「今何時だと思ってるんだい!早く夕飯の支度しな!」

そう言われ、ただ「はい」と返事をするしかなかった。




「ただいま」

刹那も家に着き帰ってきたことを知らせるとタタタと走ってくる足音が近づいてくる。
それは「刹那ちゃんおかえりー」と抱きついてきた。

「・・・ただいま。今日の晩御飯何?」

抱きついたままの母親は「私のおかずは刹那ちゃんで十分」と呟く。だが刹那はめげずに「食べ物のほうよ」と言い聞かせる

「今日はマカロニグラタン。帰ってくるの待ってたからまだ食べてないの」

すっかり娘のことを溺愛している母親。そんな母親を見つめている娘

「食べ終わったら側にいてくれる?」
「・・・いいよ」



夕食を食べ終わりお皿も片付け終わった頃、
母親は刹那にべったりくっついて

「今日は何したい?」
「テレビ見たい」
「刹那ちゃんはバラエティー好きだものね」

母親はテレビの電源をつける。
丁度お笑い番組をやっているようで賑やかな笑い声が流れてくる


それをただ黙ったまま、娘は見ているだけ。母親はツボにハマったらしく大笑いを繰り返していた



『刹那はバラエティー好きね。なんでなの?』
『え、だって面白いじゃない。他に理由なんてないよ』




・・・馬鹿馬鹿しい。友達にまで嘘吐いて。“面白い”?本当に?

確かに面白い。でも、楽しくない。
なんで私がテレビを見るか。バラエティーを好むか
皆は趣味だとしか思ってない
趣味とか全然そんなのじゃない

笑いたいだけなの。
ただそれだけ。バラエティーなら無理矢理にでも笑えるかなって思って見てるだけ。
でもやっぱり笑えない
お母さんはお父さんと別れてからずっとこんな感じで、私にべったりひっついてる

正直、あまりそうやって私のこと考えてくれてるのが辛い。
無理矢理そうしてるような感じがして嫌だ


・・・蜜柑。またおばさんに虐められてないといいけど・・・









「ごめんなさい!ごめんなさい・・・っ!」
「次皿割ったら容赦しないからね!?」

蜜柑はその頃、叔母さんに蹴られていた。皿洗いをしている時に誤って皿を割ってしまったようだ
蜜柑はすっかり怯えて床に転がって縮んでいた。

「ちゃんと片付けておくんだよ」

しばらく経ってから蜜柑は皿の破片を集めて片付けた

身体中に殴られた痕や蹴られた痕が残っている。
ふらふらと叔母さんに言われたことをただ黙って聞くことしかできない

叔母さんがテレビを見ながら爆笑している中、蜜柑は中庭に行って密かに飼っている猫に餌をやりに行く。

「・・・ごめんね」

と弱々しく呟いた時、また叔母さんに呼び戻される

慌てて猫を隠し、また言われた通りに家事をするのだった

つづく.....
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THEME | GENRE 小説・文学 |
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