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第117話 黒イ女 
一人の少女が暴走する。
それはまるで500年前に起きた、あの事件のよう。

しかし、今度はどこか違う。

そしてみんなの前に現れた謎の黒い女性―――。
彼女は一体何者なのか




寂れた、周りはコンクリートと高いビルだけが建つ場所で一人の少女が立っていた


どこからか「ニャァ」と猫の鳴き声がした。
それに反応して、声がしたほうへ首を動かす。
猫を見て、「・・・・・・・ねこ・・・」と一言放っただけ。その声はどこか嬉しそうに聞こえた。

次の瞬間、走ってくる足音が聞こえ。それを聞いた猫はびっくりしてどこかに行ってしまった
その猫がどこかに消えていくのを、じっと見ていた

「・・・女の子・・・?」
「・・・?学園長、本当にここであってるんですか?」
『ええ、あってるわよ。どうかしたの?』

ジェムを返して通信している。
その声を聞いて、少女はクルセィたちを見る。

だが、クルセィ達を見た途端に目を見開き襲い掛かる


「!?ちょっ――」
「私を殺すのか!?お前もあいつらみたいにっ!!」

少女はすでに、正気ではなく。意味不明な言葉を大声で叫びながらクルセィに斬りかかっている。
クルセィはガードシリンダーで間一髪で防いだが、少女とは思えないほどの力に苦戦していた

璃虎は少女の体に糸を巻き付け、力を振り絞ってビルの壁へ吹っ飛ばす。
少女は思いっきりビルに突っ込み、コンクリートは少しヒビが入っていた

璃虎は少女を吹っ飛ばしただけで息切れをしていた

「す、すまない・・・。助かった」
「・・・・はぁ・・・はぁ・・・よかった・・・」
「しかし、あの子は・・・?あの力、いったいどこから」

女の子はだらんと力なく壁を背にして座っている。
ジェムからは、学園長が何が起こったのか確認する声が聞こえてくる

『どうしたの!?』
「すみません。突然女の子が襲い掛かってきたので・・・」
『女の子?それ、本当なの?』
「は、はい・・・」
『・・・その子のデータ、こっちに送れる?画像でもなんでもいいから』

ジェムを通して連絡を取り合っているその間に、少女の手がピクリと動いた

少女は痛みを感じていないのか、ぬるりと体を起こし立ち上がる。
目は相変わらず目を見開き、虚ろだ。
目の奥が紅く染まっているようにも見える


「璃虎、構えろ!また来るぞ!」
「ちょ、ちょっと待って・・・!」

璃虎はジェムについているスクリーンショット機能で画像を撮った後、すぐに本部へ送った
画像は慌てて撮ったためか、ピントがずれておりかろうじて女性であるということだけが一目見てわかる程度

その画像を受け取った本部は、早速分析を開始する。

少女はお構いなしにまたクルセィ達に襲い掛かる。
やはり女性とは思えないほどの力で、男性であるクルセィでさえその力を受け止めるので精一杯だ

「ぐっ・・・この・・・!!」

クルセィは刀を受け止めながら、少女の腹に膝蹴りをくらわした。
それで一瞬だが怯んだ。その隙にクルセィは少女から離れ、シリンダーに水の結晶を装填し発射する

「ちょ、ちょっと!あの子殺す気ですか!?」
「・・・・いや・・・、たぶん、大丈夫だ」
「なんでそんなこと言えるんですか!?力が異常でも、女性であることに変わりは・・・」

「ちがう」

璃虎の言葉を遮るように、クルセィが低く言った

「・・・え?」
「・・・あの子はもう・・・」

やはり少女は勢いよく放たれた水の塊を浴びても、ビクともせずその場に立っている。
まったく痛みを感じていない。
それでも、彼女が着ている学生服はボロボロで痛々しい

クルセィは辛そうにその少女を見つめている。
その見つめている先には、ジェム。

学生服のリボンに、ジェムがついていた。
そう、彼女は行方不明になっていたアパルリッターの一人なのだ。


「・・・ジェムが・・・黒い・・・」
「もう浄化は無理だ・・・。あんなに汚れていたら・・・」


少女はフラフラしながらこちらに歩いてくる。
そして何かをブツブツと言っている

「辛いよ・・・苦しいよ・・・なんで私ばっかりこんな目にあわなきゃいけないの?私がなにをしたっていうの?どうしてみんな私を無視するの?いじめるの?私は生まれてきてはダメだったの?ねぇなんでなの?教えてよ、ねぇ・・・」


「教え゛テよ!!!!!!」


少女は、正気ではない。しかし、その紅く染まった瞳からは涙が絶えず溢れ出ている。
その様子を見ているクルセィと璃虎は、攻撃をしたくてもできない。
どうすれば少女を救えるのか、わからないのだ


その時、ほかの地域に派遣されていたルインティア、バラージュ、テレリ、隴渡、雛、深雪の6人が現場についた。


「・・・これは・・・!?」
「なんで女の子が・・・」



少女は人の数がさっきよりも増えたことに気づき、唸り声を上げる。
そして、頭の中に響いてくるのだ。

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

綺麗な女性の声が、何度も何度も響くのだ


少女は目を見開き、さらに目が紅く染まる。
そして、胸元のジェムは先ほどよりも黒く汚れていき、亀裂が走り始める。


クルセィはそれを見て急いで少女の動きを封じ込めるため、飛びかかりシリンダーから蜘蛛の糸のような網を発射させる。
それを浴びた少女は唸り叫びながら抗っている。


「一体あの子どうしたの?いきなり暴れだして・・・」
「みんな、封じ込めるの手伝ってくれ!」
「・・・どうやら、今は見ているわけにもいかないようですね」


クルセィの掛け声で、全員少女に飛びかかり力を込めて動きを封じ込める。
が、暴れているせいもあってか全員の力をもってしても押さえることはできなかった。
少女が振り払うように体を少し動かしただけで全員吹っ飛ばれたからだ


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す・・・・」

地面に倒れこんだ8人は、体勢を立て直そうと立ち上がるが少女が物凄い勢いでクルセィに襲い掛かる。
鋭い剣がクルセィの心臓めがけて突っ込んでくる。

(・・・だめだ、間に合わない・・・!)


その時、何かが弾ける音がした。次は、剣が地面に落ちた音。
何が起こったのか、クルセィにもほかの皆にも、少女にさえもわからなかった。

少女は手に持っていた剣がないことに気づき、後ろに気配を感じた。
振り向くと、そこには髪も瞳も服も靴も。
全てが真っ黒に染まった綺麗な女性が立っていた。

「・・・あれは、誰だ・・・?」


全員、彼女に見覚えはない。
しかし、女性は


「・・・・少し騒がしいから来てみたら、とんでもないことになってるのね」


この異常な状況を目にして、慌てることなく落ち着いていた。

少女はクルセィから真っ黒な女性へ標的を変更し、襲い掛かっていく。
女性は少女の頭を片手で受け止めた。
少女は前へ進もうと足掻くが、ビクともしない。女性は、反動で後ろに下がっているわけでもない。

まるで、体の動きを制限されたような感覚に陥る。

少女は頭を片手で受け止められたまま、暴れている。
その唸り声はどこか悲しい。

「・・・・あなたは最早、アパルリッターでもない。ただの、化け物」

女性の言葉に少女はさらに暴れ、唸り声も大きくなっていく。

「闇に支配されてしまった以上、あなたはもう人間には戻れない」
「殺゛してや゛るぅ!!全員殺゛してや゛るっ!!」

「・・・もう、何を言っても届かない・・・か」

残念そうに呟くと、女性は受け止めていた片手を離し回し蹴りをする。
それは見事に少女の腹に命中し、苦痛の声をあげながら遠くに飛ばされていく。

飛ばされていった方向を見ると、土埃が舞い少女の姿が見えなくなった。


女性は、立ち上がり終わったアパルリッター達を見て

「気を付けなさい。あいつは、手強い」

それだけ言うと、立ち去ろうとするがテレリが呼び止める

「待ってください!あなたは何者ですか?“あいつ”とは一体・・・」
「・・・・あなた達のお仲間。早く助けないと、大変なことになる」
「・・・・私たちの・・・?・・・・・!!まさか、シェスリナさんが!?」
「私にできるのはここまで。あとはあなた達の力で頑張りなさい」

女性はそう言うと、テレリに何かを手渡しその場から去って行った
テレリの手に握られていたのは、宝石だった。

それは一見、ジェムと見間違えるほど似ている。
白と黒が混ざり合ったような色をしている。


気づけば、傷だらけになっていた少女の姿も。どこにもなかった


つづく.......
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THEME | GENRE 小説・文学 |
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